Chapter-3 下肢超音波検査 足関節

 

膝関節の骨および靭帯・腱の解剖

膝関節の骨および靭帯・腱の解剖

膝関節の骨および靭帯・腱の解剖
足首の骨および靭帯・腱の解剖

足関節には多くの腱と靭帯が存在しているため、全ての腱と靭帯を認識して明瞭に描出することは難しい。障害されやすく描出しやすい靭帯と腱から確実に描出できるようにする。

 

 

膝関節の骨および靭帯・腱の解剖

膝関節の骨および靭帯・腱の解剖
下腿後方筋肉の解剖図
 
膝関節の骨および靭帯・腱の解剖

前距腓靭帯観察のポイント ●腓骨表面像と剥離骨片の観察
●前距腓靭帯の性状と断裂の有無の観察
●水腫の有無
●動的検査による間接の緩みの確認(前方引き出し)

  1. 軽く屈曲して前距腓靭帯をやや張った状態で

観察部位:腓骨表面と靭帯

  1. 前距腓靭帯の緩みの検査

観察部位:関節の開きを観察

アキレス腱観察のポイント ●炎症を疑う場合
腱の肥厚、性状の観察と腱内の血流の有無を観察
●断裂の場合
断裂位置と断端の寄り具合の確認
●断裂の保存療法時の経過観察の場合
癒合部分の性状と血流の確認
動的検査による運動の伝達

下腿の肉離れ観察ポイント ●断裂の確認とその範囲の評価
筋線維走行の乱れ、血種の存在を確認する。
●血種の性状
経時的に変化するので注意深く観察する。痛みを訴える部分を中心に長軸と短軸でアプローチ。血種は、受傷直後は血液の溜まりが少ないため、プローブで強く圧迫すると検出できない場合があるので注意が必要。わずかな血種を見逃さないために、筋間の裂け目を重力方向へ走査や座位による検査などの工夫も必要。血種の凝血の程度を確認する場合にはプローブで圧迫する。計測は必ず同じ肢位、同じ部位で行う。

 
足関節エコー検査:観察部位と観察のポイント   前距腓靭帯へのアプローチ手順@

腓骨と距骨を触知して確認した上でプローブを当てる。この際、外側というより、前方からアプローチするように心がけると良い。

 
距骨と腓骨の描出   距骨と腓骨の描出

丸みを帯びた腓骨と三角形の頂点のような距骨の特徴的な高輝度線状エコーを描出できる。この部位では前距腓靭帯を観察できていない。

 
大腿骨関節軟骨短軸像:成人右膝   前距腓靭帯へのアプローチ手順A

プローブを腓骨側に固定し距骨側を足先方向へわずかに回転して腓骨と距骨の間に張っている靭帯を探す。この距骨の形状変化と腱のfibrillar patternを観察する。

 
前距腓靭帯像   前距腓靭帯像

距骨の鋭角な角が丸みを帯び、腓骨と距骨の間にfibrillar patternが見られる。距骨付着部と靭帯の性状を観察する。受傷直後は出血などにより周囲に無エコー領域が存在する場合がある。

 
アキレス腱へのアプローチ:長軸   アキレス腱へのアプローチ:長軸

ベッドから足を出し、アキレス腱が若干張る肢位にして、踵部よりやや近位側にプローブを当てる。水袋のキットや、ゲルパッド、エコーゼリーをたっぷり塗布するなどして描出条件を良くする。

 
膝蓋骨近位部の長軸像:軽度屈曲位   アキレス腱の長軸像

踵骨の高輝度線状エコーに付着するfibrillar patternとして確認できる。付着部は腱の走行が変わるため、超音波ビームが垂直に腱に当たらないとanisotropyを起こすのでアプローチに注意を要する。

 
アキレス腱への短軸アプローチ   アキレス腱への短軸アプローチ

アプローチする面が丸みを帯びているので、水袋のキットや、ゲルパッド、エコーゼリーをたっぷり塗布するなどして描出条件を良くする。

 
アキレス腱短軸像:付着部より近位部  

膝蓋骨遠位部長軸像:軽度屈曲位

アキレス腱は扁平な細かい点状の高エコーとして描出される。近位へスキャンすると腱は徐々に横方向へ薄く広がり筋内へ入る。

 
アキレス腱短軸像:付着部より近位部  

下腿筋の筋へのアプローチ:腓腹筋とヒラメ筋の境界部

肉離れを観察する場合、痛みを訴える直上を中心に走査する。発症直後は血液の溜まりが少ないため、強く圧迫すると発見できなくなる場合があるので注意が必要である。

   
  下腿の筋長軸像:腓腹筋とヒラメ筋の境界部  

下腿の筋長軸像:腓腹筋とヒラメ筋の境界部

腓腹筋もヒラメ筋も筋細胞を覆っている膜が一方向性の線上高エコーに描出される。筋間の粗性結合部が低エコーに描出されている(矢印)。

 
下腿筋短軸へのアプローチ  

下腿筋短軸へのアプローチ

筋間に溜まったわずかな血種を検出するためには、解剖を理解し重力方向へプローブを走査する。長軸でも同じ走査を行う。

 
荷重部軟骨菲薄化:長軸像  

荷重部軟骨菲薄化:長軸像

本来は均等の厚さを持つ関節軟骨が、本例では不均等に薄くなっている(オレンジの範囲)。

 
半月板損傷疑い  

半月板損傷疑い

健側の半月板は、実質が比較的均質な高エコーで大腿骨と脛骨の関節隙に納まっているが、患側の半月板は実質が不均質で外へ脱臼している。

 
伸展位長軸像・短軸の膝蓋より遠位像  

膝蓋骨上嚢の関節液貯留:長軸像

膝蓋骨上嚢のわずかな関節液貯留も描出できる(矢印)。

 
脛骨粗面部剥離像:小児  

脛骨粗面部剥離像:小児

本来1本の脛骨粗面部高輝度線状高エコーが二重に描出された(矢印)。エコー上剥離骨折と判断する。痛みを訴える場所へ直接アプローチすることで診断できる。

 
膝蓋骨脛骨粗面部付着部長軸像:小児正常像  

膝蓋骨脛骨粗面部付着部長軸像:小児正常像

小児の脛骨粗面は成長と共に形状を変える。軟骨は厚く傷害がなくても、軟骨内に流入する血流も描出できる。オスグッド・シュラッター病の炎症による血流と間違えてはいけない。

 
分裂膝蓋骨長軸像:小児  

分裂膝蓋骨長軸像:小児

過去に痛みのあった膝蓋骨上方外側へアプローチすると、不連続な高輝度の骨表面が描出された(矢印)。分裂膝蓋骨と考えた。

 
第二趾中足骨骨折像  

第二趾中足骨骨折像

骨折部の骨表面にわずかに隆起し(矢印大)それを覆うように広範囲に低エコー不均質な血種が描出された(矢印小)。X線では骨折の情報しか得られない。

 
前距腓靭帯(ATFL)損傷像:成人  

前距腓靭帯(ATFL)損傷像:成人

右足関節は距骨と腓骨の間に丸い骨片と思われる高輝度エコーが存在し、前距腓靭帯はこの骨片に付着している。動的検査で腓骨と骨片の非連続性が確認された。

 
アキレス腱断裂像:保存療法中  

アキレス腱断裂像:保存療法中

腫脹したアキレス腱が描出される。断端の接合部には高エコーの瘢痕組織(矢印)が見られる。長期間観察すると、瘢痕組織のエコー輝度は徐々に薄れ周囲組織となじむが、アキレス腱自体の腫脹に著変は見られない。

 
肉離れ:腓腹筋とヒラメ筋の乖離像  

肉離れ:腓腹筋とヒラメ筋の乖離像

肉離れの範囲が広く腓腹筋とヒラメ筋の間が完全に離れ、乖離した状態。血種は無エコーで圧迫するとつぶれるため、未凝血状態。この時点で、痛みは消失している。

 
筋損傷:腓腹筋内の血種像  

筋損傷:腓腹筋内の血種像

打撲による痛みの直上にアプローチすると、腓腹筋内の筋走行の乱れと周囲が高エコーで内部が低エコーの血種が描出された(矢印)。


企画・制作:超音波検査法フォーラム
協賛:富士フイルムヘルスケア株式会社