Chapter-2 乳腺の非腫瘤性病変
 

腫瘤性病変の診断

1) 嚢胞 カテゴリー2
2) 混合性腫瘤 カテゴリー3b
3) 充実性腫瘤
5mm未満
ただし、形状不整や浸潤所見を伴うものは要精査
カテゴリー2
5mm〜1cm
縦横比が低い(0.7未満)
縦横比が高い(0.7以上)
カテゴリー2
カテゴリー3a以上
1cm以上の腫瘤は原則として要精査 カテゴリー3a以上
2cm以下の境界明瞭平滑で縦横比が低い柔らかい腫瘤 カテゴリー2
境界明瞭平滑な腫瘤に粗大高エコースポットを伴うもの カテゴリー2
腫瘤の境界部に輝度の高い帯状のエコー(ハ口ー)を伴う カテゴリー4以上
腫瘤の浸潤により、乳腺と脂肪の境界線が明らかに断裂している カテゴリー4以上
腫瘤内に石灰化を示唆する多くの点状高エコースポットを伴う カテゴリー4以上
     

非腫瘤性病変の診断

乳管拡張、乳腺内低工コー域、多発小嚢胞が
びまん性または散在性に認められる
カテゴリー2
局所性または区域性に認められる カテゴリー3以上
正常な構築の乱れ カテゴリー3以上
 
斑状低エコー域(非浸潤性乳管癌)  

斑状低エコー域(非浸潤性乳管癌)


主訴は血性の乳汁分泌。拡張した乳管と約4mm程度の斑状低エコー域が区域性に分布してみられた(矢印)。細胞診では悪性が疑われ、部分切除を行った。断端陰性だった。

 
境界不明瞭な低エコー域  

境界不明瞭な低エコー域


斑状とも地図状とも言えない病変で、境界不明瞭な低コー域とした。3〜4mmの乳管内に腫瘍が乳頭状に増生し、300µm程度の管腔が多発し、echogenecityを増加させ境界不明瞭となった。

 
architectural distortion(硬癌)  

architectural distortion(硬癌)


癌細胞が散在性瀰漫性に増殖しているため、エコーレベルはあまり低くならず、周囲の乳腺の中央へのひきつれ(architectural distortion)が、病変の存在を示唆する契機となる。

  • architectural distortion
 
放射状瘢痕(radial scar)  

放射状瘢痕(radial scar)


radial scarは小さい線維に富む組織を中心に、その周囲に放射状に乳管や小葉が配列する病態である。画像上乳癌との鑑別は難しく、エコーガイド下穿刺細胞診、組織診が有用である。

  • radial scar
 
乳管内乳頭腫  

乳管内乳頭腫


拡張した乳管内に充実エコーを認める(矢印)。立ち上がりは急峻。乳輪直下の乳管は正常でも2〜3mmあることは稀ではない。乳輪を超えて、通常観察される程度から逸脱したものを乳管拡張とする。

 
多発小嚢胞像(DCIS)  

多発小嚢胞像(DCIS)


小嚢胞が3つ区域性に認められた(矢印)。マンモグラフィでも微細石灰化が同部位に区域性に認められた。低乳頭型の非浸潤性乳管癌であった。

 
Fibromatosis  

Fibromatosis


エコー像は硬癌と類似。低エコー領域の周囲は乳腺であり、硬癌ほど高い輝度のハローではない。病理では、豊富な線維組織の増生を認める。真の腫瘍ではないが、切除断端が不十分であると再発する。

  • 低エコー領域
 
女性化乳房(圧迫により変形)  

女性化乳房(圧迫により変形)


薬の副作用や肝機能障害によって発生するが、原因が不明なものが多い。乳頭直下の乳管が集まった低エコーな部分とその周囲の三角形の増生した乳腺組織からなる。圧迫により変形し、乳癌と鑑別できる。

  • 圧迫による変形
 
リンパ球性乳腺炎(DM mastitis)  

リンパ球性乳腺炎(DM mastitis)


乳腺内の構築の乱れ。硬癌と類似した画像を呈する。乳腺内に染み込むような低エコー領域であり、その周囲のエコーレベルが上昇しているわけではない。膠原繊維の増生とリンパ球浸潤があった。

  • 構築の乱れ
 
皮下脂肪組織炎、脂肪壊死(panniculitis、fat necrosis)  

皮下脂肪組織炎、脂肪壊死(panniculitis、fat necrosis)


乳腺から皮下脂肪層に境界不明瞭な、中心部分がやや低エコーで、周囲が高エコーな領域がある。硬結触知と時に皮膚に陥凹を伴う。打撲の既往が鑑別店。経時的に病変が縮小し、不明瞭化する。

  • 脂肪壊死
 
点状高エコーの集簇(非浸潤性乳管癌)  

点状高エコーの集簇(非浸潤性乳管癌)


マンモグラフィで樹枝状の微細石灰化の集簇。低エコー域を伴わず、点状高エコーの集簇で確認された。細胞診で悪性。1〜2mmの乳管内にcomedo型の癌。エコーの検出限界であった。

  • 点状高エコーの集簇
 
点状高エコーの集簇(乳腺症)  

点状高エコーの集簇(乳腺症)


マンモグラフィで微細円形の石灰化の集簇を認めた。低エコー域を伴わず、点状高エコーの集簇が確認された。超音波ガイド下組織診では腫瘤性変化は認めず、乳腺症だった。

  • 点状高エコーの集簇
 

企画・制作:超音波検査法フォーラム
協賛:富士フイルムヘルスケア株式会社